金属アレルギー 敏感肌 化粧品

スポンサーサイト

Category : スポンサー広告 |

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

其の一 陸軍々医大尉 ○田○次

Category : 空挺隊員の証言 |

落下傘部隊衛生部員ハ戦闘員デアル
将校以下一般兵ニ伍シテ猛烈ナル降下訓練ヲ受ケ
戦場ニ在リテハ且ツ救護シ八面六臂ノ活躍ヲ要スル
茲ニ記録若干ヲ集輯シテ其活躍振ヲ紹介セントスルモノデアル


Image1525_R_20130211163606.jpg


第一章 降下體験記 其ノ一 陸軍々医大尉 ○田○次(※原文伏字)

春霞深く地上風速五米突、時に突風あり。長らく期待してゐた最初の単降下の日である。朝からぽか〃と春風駘蕩として山には春霞柵引き畠には蓮華や菜の花が花畠の様に咲き乱れてゐる小春日和である。
午前中、地上準備訓練として(一)落下傘の装着法(ニ)落下傘の使用法(三)降下準備用意(四)機胴台訓練等の教育を受け、愈々十三時教官及部隊長殿の諸注意あつて、定められた搭乗区分により十三時三十分、吾等の搭乗機は飛行場より東南方に向ひ離陸した。
高度三百米突、眼下は既に○○○の真白い海岸線が東西に長く春霞にかすんで続いておる。機種は左に大きく旋回し高度約五○○町の上空を通り、南の山腹にかゝり、西へ西へと進む。
機上では、教官の諸注意や経験者の色々な話でいともなごやかな様だが、未経験者の吾々は比較的平気を装うても一抹の不安を消すことが出来ない。ビービービーと降下場進入の相図だ。軈てビービーと二度目の合図。降下準備!
吉田中尉がドアーを開け、鐶をかけ、左手に軍刀を握りながら降下用意。教官の羽山少尉が説明するに「吉田中尉はいつも頭が下り余り模範的な姿勢ではないから、その積りで見る様に」と云うふと、吉田中尉は「馬鹿云ふな、今日は軍刀を持つて居るから仕方がない」と冗談を云つて居つたかと思ふ間に歯を食ひしばつてパツト飛び降りた。
軍刀を持つた左手に矢張り力が入つたと見えて左に大きく捻れ、身体も左に稍旋回しグル〃落ちて行つたが、やがて機体の後ろに姿を没した。
偏流の測定を終つて、やがて機は降下場を一旋回し、第二回目の進入。
高橋准尉は数回の経験者だけあつて落ちついてゐる。離脱姿勢もよく伸が模範的であつた。井田伍長は初めてなので気合が入つてゐたが、足の踏切りが悪く丸くなつて落下して行つたが傘はうまく開いた。
飛行機は第三回目の旋回。小川中尉が小生と横川中尉の脈搏測定。まだ〃落ちついてゐる積り。暫く振りでAFに乗つた性か何となく軽い倦怠感を伴つた頼りどころのない様な緊張を覚へた。ビービービー。愈々小生の番がやつて来た。
今度は他ごとではなくなつた。何だか余りにも早く自分の番がやつて来た様な気がする。ちよつと気持が悪い。今少し躊躇して降下を中止して帰つたら、臆病者と云つて嘸笑はれるだろうとちよつと考へて見る。

降下準備!茄子環を掛け扉を開け降下用意の號令と共に手と足をかけ、地上を見る。爆音と共にすさまじい風がビユーと身体に吹きつける。未だ〃時間があると教官が云ふ。心臓の鼓動がかなり早い。
此の時、プルス(脈搏)を計る方法があつたらと考へかけ、中尉に話してみる。地上を足下に見ながら離脱姿勢をとつてゐるのは、余りにも長い感じだ。
愈々降下場進入。まだ〃、あの白いマークの上に来たなら相図しますと教官が云ふ。

愈々来た降下!右肩を叩かれる。すぐに飛べない。もう一度腹に力を入れ、水平線の山を見ながら無念無想の気持ちでパツト飛び出した。自分では余程前へ飛び出した積りだが、腹が凹んで姿勢が崩れた感じ。軈て肩の當りに「ガン」と衝撃があつた。
あー開いたなと思つて地上を見た。爆音は既に遠のいて周囲は急に静寂になつた。暫くは夢中で何も見えない。予備傘を取りはづしたが、右の環がなか〃離れない。右足を縮めてやつとはづして下を見た。右鼠蹊部に縛帯が喰ひ込みかなり痛い。
地上勤務員があちこち飛び廻つてゐる。傘の取はづしに余りにも時間をかけ、最早や地上に近い。足!足!と地上で誰かが怒鳴つてゐる。股に深く帯が食ひ込んでゐるため、足が開いたまゝどうしても膝がつかない。
地上二、三十米で突風に合ひ急に二、三十米東に流され左側方に大きく揺られながら接地。
ゴロ〃とニ、三回側方回転、山野少佐殿と衛生部員が上衣を脱いで何か喚きながら駈けてくる。
山野少佐殿が大丈夫か〃と云つて居られた。
すぐ立上つて傘の右側より風下へ廻る。
嗚呼、やつと大地に着いた。一安心と云つたかたち。

「大丈夫か」ともう一度云はれる。
「とんでもなく流されたな」
何となく嬉しくなつて一人でにや〃笑つてみる。
金曜日の厄日も又、池田中尉母堂の命日も無事に済んだ様だ。

【附訳】
以上は最初の降下体験として軍医分團研究會に於て発表した抄録に過ぎません。
外國の文献に依りますと、降下時にはかなりの興奮と不安感を伴ひ、暫く聴力が消失するとか又、意識障碍として落下する感覚が消失するとかありますが、個人飛行時間とか各種器官の鍛錬により相異するものと思はれます。
事實、小生などは任官以来航空部隊にばかり居りましたお蔭で相當時間乗つて居りますし、又水泳特にダイビング、スキー、スケート等をやつたゝめか聴力の消失も意識障碍もなかつた様です。

又、民族的にも色々と異なる点があり、日本人は特に降下に何しろ適して居るのではないかと思はれます。
之から色々と体験・研究し別に発表する機會もあると思ひます。



スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。